卒業は「別れ」じゃない
人事労務部 K先生の教え子(女性)
3月といえば、「卒業」。だんだんと暖かくなり、春の匂いが混ざるこの季節、ふと懐かしい卒業の記憶が蘇り、自然と切ない気持ちがこみ上げてきます。 毎年思い出すのは小学校の卒業式、担任のK先生が男泣きする姿です。K先生は私が3年生のときに新任教員として私達の小学校に赴任し、それから卒業まで4年もの間、私のクラスの担任をしてくれました。熱血で親しみやすいその性格からか、他の先生達よりも身近な存在であり、私の人生で出会った先生のなかでも一二を争う印象深い先生です。K先生にとっても私達は初めて担任をもった児童であり、卒業式の涙は先生がいかに私達を想ってくれていたかを物語っていました。 しかし、卒業してから数年後に先生は別の学校に転任されており、私達の成人式で再会出来て以来、K先生と会うことはありませんでした。そんなK先生が、昨年私達の母校に赴任となったこと聞きました。30歳という節目、成人式から10年を迎える年に、再び先生が母校に戻ってきたことに偶然だけでない縁を感じ、小学校からの友人とともに先生を訪ねることを決めました。 名前も覚えてくれていて その日は小学校の運動会。かつてと変わらず(18年という年を経て当時20代だった先生は年相応に「おじさん」になっていましたが(笑))児童と競技を楽しむ先生の姿を発見し、懐かしい記憶が蘇ってきました。恐る恐る、先生に近づいて呼び止めました。「K先生!」私達を見て一瞬戸惑った表情を見せたあと、目を見開いて、「おぉぉー!!」と嬉しそうに声をあげた先生の顔が今も目に焼き付いています。(名前も覚えていてくれました) 後日開催した「K先生を囲む会」では、懐かしい思い出を語り合った後、当時の裏話やK先生の武勇伝に加え、卒業を迎える時に先生がどんな気持ちで私達を中学校に送り出したのかを聞くことができました。 気がつけば私達も大人になり、当時の先生の年齢をとうに越えています。この18年の間、先生を思い出すことは何度もありましたが、また先生と会ってこんな風に話をする日が来るとは想像もしていませんでした。いくつかの偶然が重なり、再び先生と会えたことをとても嬉しく感じます。 住む場所や環境が変わり時間が流れるとともに、人との繋がりは段々と薄くなっていくものです。遠くにいて会えない人や長く疎遠になっている人は多くいますが、この先ふとした偶然や縁で、再び出会うことがあるのかもしれないと、先生との再会を機に思うようになりました。 記憶の中にいる「懐かしいあの人」と、いつかまためぐり合う日が来るかもしれない。そう思えば、別れの記憶が染みついた卒業の季節、春の匂いにも、切ないだけでない希望が混ざっているように感じます。