読書
製造部圧延課 紙吹雪 (40代・男性)
椅子と机に夥しい数の本。本好きにとって、図書館はとても居心地の良い空間である。やはり、図書館とはこの数千数万冊に上る本があってこそ…と思っていたのだが、これを覆す言葉を姪は言い放った。自宅に板二枚を組み立てた100冊余りの本棚を指さして、「これは二列図書館なの」と…。「二列図書館?」と聞き返したが、やはり図書館との答えが返ってくる。 図書館に貯蔵されている数千数万冊の本の中、興味のある本はごく一部であり、他の本は無いに等しい。だから、興味のある本のみを集めたこの本棚は、自分にとって図書館と呼べるのだそうだ。なんだかわかるような、わからないような…。だが、今はそれで良いような気もしている。その二列図書館は自由に増設が可能であり、おそらく現在は、少し増えて2.5列程度になっているのではないかと思う。いつの日か、三列図書館が完成したあかつきには、本の一冊でも寄贈しようと考えている。 “珠玉の一行”を求めて さて、姪の言葉に従うならば、自分も一列ながら図書館を持っていることになる。 ずいぶん昔、本屋で「想像力と数百円」と書かれた栞を貰えた頃(※)、このキャッチコピーに感銘を受け、本を読むようになりかなり買い読んだのだが、いつの間にか繰り返して読む本だけが残った。 何かの本で読んだ中に、“言葉にヤスリをかけ、蒸留し、精練し、絞り出して珠玉の一行を書く”というような事が書いてあった記憶がある。自分にとって、そんな一行のある本が、今手元に残っているように思う。最近は以前ほど読まなくなったが、時々引っ張り出しては無くしてしまった栞の代わりに折り曲げられた、好きなページを読んでいる。 しかし、栞も無く、ページも折り曲がっていない幾冊かの本がまだ残っていて、休日にページを折るために、そして心に残る一行を探すために、少しずつ読んでいこうかと思っている。 (※)20数年前、糸井重里さんが「想像力と数百円」というキャッチコピーを考えられた。文庫キャンペーンで、この言葉が書かれた栞を貰い、この言葉に感銘を受け、本を読むようになった。