場所:オーバード・ホール

写真提供:田中広告写真



第二部

前田憲男スーパー・カルテット+伊藤君子

【曲目】
Misty(ミスティー)
Stella By Starlight (星影のステラ)
Five Spot After Dark(ファイブ・スポットの夜)
Moanin’
Stardust
A Night In Tunisia(チュニジアの夜)
The Boy From Ipanema(イパネマの少年)
A Song For You
【津軽弁ver.】 Fly Me To The Moon(へーでけって、お月様さ)
【津軽弁ver.】 Summertime
Autumn In New York(ニューヨークの秋)
You’ve Got A Friend(君の友達)

アンコール:Follow me 〜フォロー・ミー


 司会者による「1曲目はエロール・ガーナーの名曲、Mistyです」の紹介で前田憲男さんが登場。ピアノの前に座って流れ出した曲は、第1部の1曲目に演奏された「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の冒頭部分でした。関西のご出身で“ジョーク大好き”な前田さん、面目躍如(?)。立ち上がって改めてのご挨拶に、会場から楽しげに拍手が起こりました。ピンスポットで浮かび上がった前田憲男さんの指先から、優しいバラード「Misty(ミスティ)」が流れ出しました。さまざまにテンポを変えながら、自由奔放に歌うような演奏は、会場のお客様を一気に円熟の前田憲男ワールドに引き込み、深まり行く秋の、くつろぎのひと時にいざないました。


ここで前田さんのご挨拶。「実は富山は初めて。素敵な町並みにも感心しましたが、このホールにも驚きました。素晴らしいホールですね。こうした催し物をたくさん催していただいて、文化・音楽シーンを盛り立ててください。」



2曲目 Stella By Starlight (星影のステラ)
  ベーシストの斉藤誠さんが登場し、デュオでの演奏は「Stella By Starlight(星影のステラ)」。ベースの弓弾きによるゆったりしたイントロから、テーマに移るやいなや、リズミカルなテンポに変わり、お互いの音に呼応しながら進んでいきます。澄んだ夜空に広がる満天の星空を楽しむ、秋らしい曲目と演奏です。




3曲目 Five Spot After Dark(ファイブ・スポットの夜)
  ドラムの関根英雄さんが加わり、トリオでの演奏は「Five Spot After Dark(ファイブ・スポットの夜)」。ブルースのジャズ・スタンダード・ナンバーです。ピアノのイントロに続いて、テーマ、ソロへと前田さんのスリリングな演奏が続きます。左右の手でひとつのメロディーを音程をずらして演奏するという、絶妙なテクニックです。後半のドラム・ソロとのやり取りも、楽しい会話のように聞こえ、ベテラン勢のトリオによる演奏だけに、熱い想いを感じさせながら、抑制された表現で盛り上っていきました。



4曲目 Moanin’
当日の「スーパー・カルテット」の最後のメンバー、アンディ・ウルフさんの登場です。ジャズ・ファンでなくても、一度はどこかで耳にしたという演奏曲目は「Moanin’」。日本でも大ヒットしたおなじみの曲だけに、会場のお客様も身体やつま先でリズムを取りながら、お楽しみです。



5曲目 Stardust
  アンディ・ウルフさんのテナー・サックスをフィーチャーして、季節感あふれる演奏は「Stardust(スターダスト)」。テンポなしで演奏されるイントロ部からテーマへと、歌うように奏でるウルフさんのバラード・フレーズを、やさしく確実にリズム・セクションがサポート。感動的な1曲になりました。


ここで前田さんにインタビューです。
司会(岡本)「昨日は岡山、今日は富山、明日は東京でコンサートと、たいへんお忙しいスケジュールの中、おいでいただき本当にありがとうございます。テレビなど拝見していますと、そこかしこで“編曲:前田憲男”というお名前を拝見するのですが、アレンジのお仕事などは、いつなさるのですか?」
前田「いつと言わず、朝起きてから夜寝るまで、ほとんど書いていますね」
岡本「以前から“前田憲男伝説”なるものを耳にするのですが、両手にペンを持って違うパートを書いておられるとか、片手に2本持って書いておられるとか?」
前田「ほとんどウソです(場内、笑)。早いのは自信があるのですが、私の仕事ぶりを評して、音楽仲間がそのようにアレンジするわけです。まあ、ジャズマンはアレンジするのが仕事ですから…」(場内、爆笑)
岡本「昭和9年のお生まれと伺っていますが、お元気ですよね」
前田「ひとつね、ギネスを狙っているのですが、100歳でコンサートをやりたいんです。先日の報道によると、東京都内で100歳以上の人が2000人くらいおいでなんだそうで、そんな時代なんですよ。でもまだ100歳でコンサートをやったミュージシャンはいないそうなので、ぜひやりたい。そうしたら100歳以上の人は無料招待しますよ。」(会場から拍手)




6曲目 A Night In Tunisia(チュニジアの夜)
  スーパー・カルテットとしての締めくくりは、ハード・バップの名曲「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」です。テナー・サックス、ピアノ、ベースのソロと歌心いっぱいのフレーズに続いて、熱いドラム・ソロが会場を沸かせました。


前田憲男さんのご紹介で招き入れられた伊藤君子さんは、スキップでのご登場。


7曲目 The Boy From Ipanema(イパネマの少年)
  伊藤君子さんの1曲目は、ボサ・ノヴァの名曲「イパネマの少年」。この日は4ビートの軽快なリズムで楽しい演奏。富山での演奏は、一昨年の「原信夫とシャープス&フラッツ・ファイナル」でのご出演以来です。デビュー当時から変わらない、語りかけるような歌声は、お客様の心を一気につかみました。



8曲目 A Song For You
  ポピュラー・ナンバーもたくさんレパートリーに取り入れて歌っておいでの伊藤さん。2曲目は、レオン・ラッセルの曲、「A Song For You」です。「カーペンターズのヒット曲“スーパースター”に対するお応えの曲だそうです(伊藤)」。デビュー当時から歌い続けてこられた、思い入れのある曲だけに、胸を打つ歌声が会場いっぱいに広がりました。


9曲目
「以前、津軽弁のアルバムを作りました。その中から2曲(伊藤)」とのご紹介で演奏されたのは「Fly Me To The Moon(へーでけって、お月様さ)」。
 この10月20日に発売される予定のアルバム「まっかなおひるね」は、9曲中8曲が日本語の歌詞で歌われていますが、日本語を大切にし、方言の持つ温かさと力強さを大切にする伊藤さんの、歌声とお人柄に会場は大きな拍手を送りました。


10曲目 津軽弁バージョンの2曲目は「Summertime」。
  ジャズのスタンダード・ナンバーの中で原曲が「子守唄」の曲が何曲かありますが、この「Summertime」もその一曲。ジョージ・ガーシュインの有名ミュージカル「ポーギーとベス」 の中の挿入歌の子守唄です。「寝た子を起こす子守唄になってしまったかも…(伊藤)」。伊藤さんの歌唱力が光ります。


司会(垣田)「津軽弁バージョンはかっこいいですよね〜」
伊藤「ミュージシャンは津軽弁のもつリズム感に、みんな魅力を感じているんですよ。それで以前、伊奈かっぺいさんにお会いした時に、津軽弁を教えていただいて、それで青森でコンサートをやったんですが、もったいないから『ジャズだが?ジャズだじゃ〜津軽弁ジャズ〜』っていうアルバムにしたんです。」


11曲目 Autumn In New York(ニューヨークの秋)
  ステージ上は前田憲男さんと伊藤君子さんだけになりました。ピアノだけをバックに演奏されたのは、「枯葉」とともに秋の代表的ナンバー「Autumn In New York(ニューヨークの秋)」です。深まり行くニューヨークの風情を彷彿とさせる名曲です。セントラル・パークの紅葉、コート姿でストリートを行き交う人々が、伊藤さんの歌声で想い描かれました。


12曲目 You’ve Got A Friend(君の友達)
ステージ最後の曲として演奏されたのは、キャロル・キングの曲で、マイケル・ジャクソンが1971年にソロ・デビューしたアルバムの中の大ヒット曲「You’ve Got A Friend(君の友達)」。ゆったりしたテンポでの演奏は、コンサートの終わりを惜しむかのようです。
演奏が終わって、伊藤さんからメンバーの紹介がおわっても、拍手が鳴り止みません。アンコールを求める拍手の嵐に応えて、全員が再び登場。そして演奏されたのは「Follow Me」です。



アンコール Follow me 〜フォロー・ミー
クラシック・ギター協奏曲の代表曲のひとつとして知られる「アランフェス協奏曲」の第2楽章は、哀愁をたたえた美しい旋律で広く知られています。このメロディをテーマにして数多くのジャズ・プレーヤーが演奏していますが、伊藤君子さんは、ヴォーカル曲「Follow Me 」として’89年の日米同時リリースのアルバムに収録。また'04年にはアニメ映画「イノセンス」の主題歌として収録しなおしました。この日の締めくくりのアンコール・ナンバーとして、音を通じて同じ時間を共にした会場の皆様への想いが伝わってきました。




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