目を瞑ると、先日の光景が甦ってきます。歌に合わせて、ものすごく嬉しそうに手拍子をしている人の姿。涙を流して音楽に聞き入る人の姿。一緒に歌を口ずさむ人の姿。そんな生き生きとしたお客さんの姿を見たときに、この野外ライブを開くことができた、という心からの喜びを感じずにはいられません。

パーソナリティーの伊藤敏博さんと 終了後、笑顔いっぱいのお二人（編集部）

　フォークルネッサンスライブ in 太閤山ランド。大谷製鉄�鰍ｳんにご協力いただいて、去年から、KNBラジオ・伊藤敏博フォークルネッサンスで野外公開ライブを行っています。 今回のメインゲストは、今年「かぐや姫」を再結成する伊勢正三さん。｢好きになって、よかった｣を歌う加藤いづみさん。伊藤敏博さんの「景子」という曲をカバーしている門倉有希さん。爽やかな伸びのある歌声、話題の新人indigo blueさん。多彩なアーティストの歌声が、からっと晴れた太閤山の青空に響き渡りました。
　ライブの盛り上がりが最高潮に達したのは、やはり伊勢正三さん・正やんが登場した時です。
　「あなたが船を選んだのは〜私への思いやりだったのでしょうか〜♪」美しい歌声にうっとり聞き入った『海岸通』。｢嬬恋に向けて、今、僕の中でかぐや姫モードだから、この曲！｣と、かぐや姫の『置手紙』。大きな手拍子で会場が１つになった『ささやかなこの人生』。どれをとっても、昔ヒットしたフォークソングというより、時を経て、更に磨きがかかった生きた音楽の数々でした。

　すっかりフォークに魅了され、朝のモーニングコールを『２２才の別れ』にするほど、フォーク好きな私は、ステージに立つ前の「正やん」さんと、こんな会話を交わしました。

「フォークをよろしくね」と「正やん」さん

　｢え、朝から２２才の別れ？ちょっと暗いんじゃない？｣って本人に笑われながらも、私が普段から抱いているフォークソングへの想いをぶつけてみたのです。
　｢正やんさん！私はフォークソングを懐かしい、という枠組みにしたくないんです。その時代を経験していない私がきいて、今を生きる元気と勇気をいっぱい、いただいていますから！｣
　２４歳の小娘の力説に、サングラスの奥の瞳が、優しく微笑みました。
　｢それは驚いた。嬉しいなぁ。じゃあ、これからもフォークをよろしくね｣
　フォークをよろしく…。まるで、フォーク界の未来を託された様な気持ちにさせるその言葉は、私にとって、人生の大先輩からの最高のプレゼントになりました。
　エンディングは『なごり雪』。ステージと会場が１つになっての大合唱でした。会場のほとんどの人が嬉しそうに、笑顔で歌っているのが見える。私は胸がいっぱいになってしまいました。

　フォークは時代の宝物。その宝物を磨きあげ、皆で共有できる空間があることはどれだけ幸せなことだろう。永遠に色褪せることのない、夏の思い出の１ページ。１人でも多くの方の宝物になることを祈っています。