特別寄稿
第12回「OTANI ふれ逢いステーションに参加して」
谷口英治セクステット・リーダー クラリネット奏者 谷口英治
この度は7月25日開催の「第12回OTANIふれ逢いステーション」に谷口英治セクステット(六重奏団)をお招きいただきましてありがとうございました。 九州男児の私ですが何かと富山と縁があり(今ではちょっとした応援団も存在)、これまでに県内で何度か公演する機会を持ちました。 そのつど感じることなのですが、富山のオーディエンスは聴くところはじっくり聴き、盛り上がるところはしっかりと盛り上がる…実にやりやすい(笑)のです。さらに今回のお客様は「ふれ逢いステーション」リピーターの方も多いらしく、ジャズコンサートのマナーをわきまえていらっしゃる。演奏者をのせるのがウマイ! 私はつね日頃申し上げているのですが、音楽の中でもジャズはとくにスポーツ的要素が多く、「ジャズ鑑賞」ではなく「ジャズ観戦」だと思うのです。みなさんの応援で試合内容はどのようにも変化する。ですから客席もセッションの良否の鍵をにぎる重要な要素なのですね。回を重ねながら音楽家もオーディエンスも一緒に育つ、本当にすばらしい企画が根付いているなとうらやましくなるほどです。 複数管アンサンブルの発展を願って ところで今回率いてまいりました「谷口英治セクステット(六重奏団)」、コンボとしてはやや大人数のユニットです。 私は中高生のころクラリネット奏者の大先輩、北村英治さんの率いる3〜4本の管楽器をフロントに擁する「北村英治オールスターズ」の演奏に夢中でした。吹奏楽部だったこともありワンホーンよりも複数管のアンサンブルが好きだったのです。代わる代わる飛び出す、きら星の如きスタープレイヤーのソロ、そしてビッグバンドを思わせるゴージャスなアンサンブル…そういったモダンスイングのサウンドは昨今ほとんど聴くことができません。このモダンスイング・アンサンブルの発展は私のライフワークの一つと考えています。 そしてついにこの秋9月23日、谷口英治セクステットのよるアルバム「ジェントルメン・フォー・スイング」がリリースされます。しかもスペシャルゲストとして北村英治さんが参加してくださいました。私にとってはまさに少年のころからの夢をかなえた作品と言えます。そう、会場にもたくさんの吹奏楽関係の中高生が来てくださいましたが、みなさんにお伝えしたいことは「夢に向かって信念を持って突き進むこと」の大切さです。夢を100%かなえるというのはなかなか大変なことですが、その過程で得られる様々なものはみなさんにとって夢そのもの以上にかけがえのない人生の栄養になると思いますよ。 「ふれ逢いステーション」は白川ミエさんとセクステットの初共演という音楽家どうしのふれあいも演出してくれました。白川さんは初共演とは信じられない迫力でセクステットをリード、コンサートのクライマックスを作り出しました。 それからお客様には大変申し訳ないのですが、終演後の打ち上げで当バンドの袴塚淳氏が会場にあったピアノでBGMを弾きはじめたのをきっかけに出演者が次々に部屋の楽器を取りに戻り、両バンド入り乱れての一大セッションとなりました。こういうのもジャズならではのことですよね。そんなジャズという音楽の素晴らしさをこれからもたくさんの人々に伝えるべく「OTANIふれ逢いステーション」、ますます発展していってほしいと思います。そしてできますれば、また近いうちにお声をかけていただければ幸せです。 末筆ながら、このコンサートに携わったすべての方々に改めて御礼申し上げたいと思います。