お盆が過ぎ、地元の祭りの華、獅子舞の練習が始まりました。笛、太鼓の音を聞くと、昨年の事をつい昨日のことのように思い出します。

　夫が参加していることもあって、1歳から夜の練習に顔を出していた息子が、自分から「小天狗（キリコ）をやりたい。」と言ったので、練習をしている小学生に混ぜていただきました。息子なりに頑張ってはいましたが、なかなか形になりませんでした。そのくせ、グチは出るわ、トイレ休憩や水分補給で中断する事が多いわでやる気が見えず、夫は日を追うごとに厳しくなるばかり。“やりたい”と“出来ない”の狭間で葛藤し、息子は悔しさで何度も涙を流しました。ですが、「自分で決めた事はあきらめないでやり遂げてほしい」という私の思いを汲んでいたのか、毎日不平不満を言いながらも、途中で辞めるとは言いませんでした。

粋なサプライズに感謝
　
　結局、小天狗デビューは翌年、つまり今年までおあずけになり、足袋と草鞋を履いて主人のまわす獅子についてまわりました。獅子は、１軒１軒まわします。私の待つ我が家へやってきた際、息子は、衣装を着ずに踊らせてもらいました。すると、獅子方の皆さんが息子に小天狗の衣装を着て踊らせてくれると言うのです。寝耳に水で、私もびっくり。どうやら祭りの前夜、獅子方の大人たちのサプライズで、夫の実家で、小天狗の衣装を着て踊る段取りをしてくれていたのだそうです。当日、息子本人の「やりたい」という気持ちを確認し、めでたくサプライズは成功したのです。

　獅子方の皆様の心配りに、感謝の気持ちでいっぱいでした。特に、出来るようになる迄に人一倍時間がかかり毎日不満をこぼす息子に、根気よく教えてくれた中学生のお兄ちゃんには感謝してもしきれません。日々の練習後、息子の様子が彼と彼のお母さんのなかで話題にあがり「形になってきているから、もう少し。なんとか出してやりたい。」そんな風に言ってくれていたそうです。衣装を着て踊る息子を嬉しそうに見てくれた彼を、私はずっと忘れません。大勢の獅子方の皆さんに気にかけて頂き、一軒踊るだけなのに校区外の息子の友達とお母さんがわざわざ見に来てくれるなど、多くの方に支えられている事を実感した忘れられない祭りとなりました。
　息子も、泣きながらやり遂げた先に、きっと何か手にしたと思います。小学校１年生がどれだけ分かっているか分かりませんが、大勢の方が自分のために動いてくれた事を当たり前だと思わず、感謝できるようになってもらいたい。そして、今後、投げ出したいと思う出来事にぶつかったら、この時の様に逃げないでほしいと思いながら、不器用なりに2週間頑張った息子を褒めてやりました。

　そして今年。
　息子は練習に参加し頑張っています。祭り当日、息子のとびっきりの笑顔と、その姿を見守る夫の笑顔が見られるといいなと思います。