9月15日(月) 敬老の日
技術部敷設課 ハンドルネーム 祖父とトーク(20代後半)
「おじちゃん、絵本読んで〜!」 夏休みを利用して遊びに来ていた姉の長男坊が、どこから見つけたのか、古めかしい絵本を手にテクテクやって来て、私の膝の上にちょこんと座り、絵本の見開きを開いた。その絵本は、私が幼い頃から何度も読み返していたものだった。懐かしく思いながら読み聞かせているときに、そばを通った姉が「あなたも子どもの頃に、よくおじいちゃんの膝の上で読んでもらっていたわね」とつぶやいた一言で、幼かった頃の、じいちゃんの記憶がよみがえってきた。 私の祖父は今年88歳を迎える。住まいは私達家族と別居、と言っても隣同士だが、一人暮らしで頑張っている。土いじりが日課で、毎朝畑の手入れをしている。他にも掃除、洗濯、食事の用意と、一人で何でもサクサクとこなしてしまうパワフルな人だ。 私はそんな祖父を尊敬する一方、あまりのマイペースさにときどき面食らうこともしばしばだ。こちらの事情をまったく考えないで、自分にとっての関心事だけを一方的に言うというのが得意ワザだ。 たとえばある日、私が風邪をひいて寝込んでいた時、祖父が家に遊びに来た。私の風邪を知って、「ちゃんと体を休めなきゃなぁ。」と言って、舌の根も乾かないうちに「あ、ところで、じいちゃんコーヒーが飲みたいなあ、コーヒー入れてくれるか?」と、こうだ。「それ、病人に頼むこと?」とツッコミを入れたくなるのは山々なのだが、じいちゃんの“何の気なし”な顔を見ていると、呆れて何も言う気にならない。 そんなマイペースな祖父と私はここ数年、仕事や私生活の忙しさもあって疎遠気味になっていた。 忘れかけていた感謝を形に しかし思い返せば、小さい頃の祖父との思い出は数え切れない。孫として、というより友達のように遊んでくれた。本読みや獅子舞ごっこなど、私がせがむと、嫌な顔一つせずに付き合ってくれた祖父がいた。膝に座る甥っ子と幼かった頃の自分が重なる。私が甥っ子達を想うように、祖父も私に沢山の愛情をくれたのだろう。最近、その愛情に応えられていない自分は、祖父に対しての感謝の気持ちを忘れていたのかもしれない。 9月の敬老の日は、祖父を交えた親族の温泉旅行が企画されている。相変わらず忙しい自分は未だ祖父とは疎遠気味のままだが、この機会に祖父の背中を洗ってあげようと思う。 そのときは、じいちゃんの“マイペースな会話”も受けて立たねばなるまい、と思っている。