秋の夜長、芸術に浸る
生産管理室 ハンドルネーム 舞台けい子(20代前半)
高校時代、あるきっかけで演劇部に入部することになりました。 私が通学していたT高校の演劇部は、当初は部員3人だけで、当然裏方である照明や音響、舞台係などは、演劇部員の友達が、頼まれて手伝っていました。最初私は、舞台袖で手伝う中の一人でした。そんな演劇部でも、日々の熱心な活動のおかげで、地区大会、県大会を勝ち抜き、遂に中部大会に駒を進めるまでになったのです。“演劇部員の友達”でも、正式に部員登録しなければ愛知県までの旅費は出さず、との高校の方針があったため、中部大会出場をきっかけに、私も演劇部に入部することにしました。 わが演劇部が演じたのは、創作劇『運動部は動かない』。ストーリーはだいたいこんな感じです。 「ある高校の『運動部』では、二人の部員、赤星君と沖原君が何もせず無気力な毎日を送っていた。『運動部って何するところ?先輩も顧問もいないんだけど。』殺風景な中に火炎瓶、血糊のついた幕、セーラー服や機関銃が散乱している部室で、二人はこう呟いた。迎えた夏休み、おそらくテレビドラマの影響で、赤星君は北海道へ自分探しの旅に発つ。『赤星行っちゃったよ。』一人残され茫然自失の体の沖原君の前に、突然運動部の先輩を自称する、ムショ帰りの老人が出現。社会への反抗、長いものに巻かれない精神など、若者の怒りを爆発させるよう教え諭す老人。そして休み明け、沖原君は闘志みなぎる社会運動家に変貌していた…が…」 ミュージカル仕立てやお笑いも 大会期間中は、中部各県の代表高校の演劇も見ましたが、私はここで初めて、演劇が意見・主張の表現手段として大きな力を持つことを知りました。各校作品のテーマは、戦争が招いた心の葛藤、理想の父親(と同年代の男性)を探せる援助交際サイト、会話のない家族、自然崩壊や野生動物の置かれた環境などで、様々な切り口で自分達の主張をおこなっています。表現方法も、大人数で歌って踊るミュージカルから、役者2人が掛け合う迫真の舞台、コントさながらの笑える舞台など、観客が知らず知らずの間に見入ってしまい、終わる頃にはテーマを深く考え、噛み締めているような出来になっていました。 演劇に限らず、芸術作品とは様々な価値観の表現であり、それを発信するものだと思います。音楽然り、映画然り、建造物然り。特に歴史的に伝統のあるものは、時間の検証を経て、淘汰の末に残り、なお人が望むような、普遍的力があるものと思います。それにふれた人の感想は個人によって違いますが、様々な価値観にふれることができる芸術鑑賞は、秋という季節にぴったりです。この秋は皆さんも“芸術の秋”を堪能してみませんか。