製造部圧延課 ハンドルネーム へヴィメタ・ボ(40代前半)
私の趣味は読書と音楽鑑賞だ。青春時代から、この両方に明け暮れていた。秋に限らず、年中である。 文芸界で好きな作家を挙げるなら、赤江瀑という作家だ。東京での学生時代、よく図書館で手当たり次第にいろんな作家の本を読んだが、その中でも、彼の作品にはまってコレクションするようになった。 “耽美的、伝奇的作風”と紹介される彼の作品は、歌舞伎、能、陶芸、演劇、刀剣、刺青、城、京都、奈良といった日本古来の伝統芸術を題材にした著作が主で、芸道と生の間の葛藤や破滅を、官能的な筆致で描くことからコアなファンも多い。 東京から唯一持ち帰った本が赤江作品だったくらい、今でも私のお気に入りだ。彼の作品の中には日本の伝統芸術や工芸の情報が詰まっており、日本の風土に培われた古くからの芸術は奥が深く、私にとってとても魅惑的である。 一方音楽についても、若い頃、将来は凄腕のギタリストになりたいと夢を見たこともあった。しかし、元来の自分の音痴さとリズム感のなさに早くに気付いていたため、あきらめも早かった(笑)。とは言うものの、現在も様々なジャンルの音楽を聴いたり、インターネットで業界の情報をチェックしたりと、楽しんでいる。部屋のCDコレクションも年々増加していく一方だ。 「秘すれば花」 この作家に影響され興味をもつようになった能楽の世界での巨星・世阿弥の残した好きな言葉に「秘すれば花なり 秘せねば花なるべからず」や「初心忘るるべからず」という有名な至言がある。どちらも本来なら、芸道のありかたについての奥義としての言葉であるが、独立してみた場合の言葉の広がり、世界観はとても巨大である。 「秘すれば花」…おっと、好きな作家を暴露してしまったのは早計だった。 狂おしい猛暑が過ぎ去り、穏やかに過ごせるようになる秋は、魅力的な食材もそろい、胃袋も精力的に活動を始める。ここしばらく活字ばなれしていたが、これを機に、体だけではなく、心・精神にも栄養をつける機会にしよう。この秋は好きな音楽とともに、一連の赤江作品を読みかえそうと思っている。贅沢な時間になりそうだ。