特別寄稿 KNBラジオ「レディオ・グラフィティ」 パーソナリティ、ロック・オヤジのひとり言
放送作家、音楽評論家 竹中 晃
60年代のロックやポップスは如何に優れていたのだろうかと2008年の今、あらためて思う。 そう思えるのは自分が50代になったからでもあるだろうが、それだけじゃない。現在のヒット曲のそこここに60年代のサウンドが生きているし、なにより当時スーパースターだったミュージシャンたち〜ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンなどなど〜が、今も現役として全世界で数百万ものファンを動員し続けていることでも実証できる。 それにしても、なんということだろう。あの当時、多くの10代の子供たちは、自分が50歳を過ぎても彼等がワールド・ツアーを行うことなど予想もしなかった(もっとも、自分が50歳になる姿も想像できなかったのだが)。つまり、それほど60年代のロックとポップスが今でも<有効>だということなのだ。 音楽は体の一部 あの頃、日本の歌謡ポップスはともかく、洋楽の情報などは無いに等しい状況だった。そんな中で頼りにしていたのが月刊誌の<ニューミュージック・ライフ>であり、ラジオの洋楽番組だった。ただ、月刊誌の情報は遅く、僕たちは必然的に毎週いくつかのラジオ番組を聴き、ノートにベスト10を書き込み、気に入った曲があればハガキに曲名を書いてリクエストを出した。 こうしてロックやポップスはごく自然に僕たちの血になり、身体の一部になったのだ。 現在、<オヤジ・バンド・ブーム><アナログ・レコードの復権>のようだが、それはおそらく時を経て幾多の山河を越えた今、あの頃のロック小僧たちの血が騒ぎ出し、どうにも堪らずギターを手にしてしまうのだろう。再びターン・テーブルにレコード盤を乗せて、夜を過ごしてしまうのだろう。 60年代前後のロックとポップスは、大胆で、繊細で、過激で、革新的だった。そんな時代に居られた幸運を、多くのロック&ポップス・ファンの一人として感謝せずにはいられない。