総務部経理課 越本知子
産休に入ってから、普通は出産に向けての準備に大忙し…という話をよく聞きましたが、主人の兄弟にはすでに何人も子どもがいるので、ベビーベッドなどは、その“お下がり”で心配いりませんでした。あげくに私の実家の両親は、初孫の誕生ということで、大いに張り切り、肌着からベビー用耳かきなど、細々としたものまで、全部そろえてくれました。私は、自分の体調管理と生まれてくるわが子のことだけに専念でき、穏やかに出産に備えることができました。 胎教なんてことも意識して、それまであまり聴かなかったクラシック音楽を聴かせたり、たまに童謡を聴かせるときは、私もお腹の子に聴かせるように口ずさんでいました。 陣痛を感じ始めた日の朝9時頃、いったん病院で診てもらったあと、たぶん一度自宅に戻って、翌日くらいかなと思って行ったのですが、行ってそのまま入院。そして、その日の午後7時くらいには出産できました。主人も出産に立会ってくれ、一緒に生まれてきたばかりのわが子を目にしたときは、この上ない喜びと安堵で「本当によかった」と心から思いました。 ただ、前方前頭位といって、産道から赤ちゃんが出てくるときの旋回が通常と違っていたようで、主治医の先生や看護士の皆さんにとっては大変だったようです。後日「大変な出産だったけど、元気に生まれてきてくれてよかったね」と声を掛けられ、自分の出産が大変だったことを実感しました。 子育てによって母になる 今は、自分でも不思議なくらい、何よりも子供優先という生活です。洗濯物を干していても、子供が泣けばすっ飛んでいき、ミルクをあげたりおしめを変えたり。ご機嫌を伺うのにずっと付きっきりで、洗濯物がそのまま放置なんてこともしばしばあります。今のところ夜泣きもしません。夜中に一度は起きますが、ミルクをあげれば静かに寝てくれます。生後半年ほどしたら、夜泣きが始まるなんてこともききますが、今は可愛いものです。 育児をしていると、子供は母親のことをよく見ているな、とつくづく感じます。私の気分がなんとなく落ち込んでいるときは、子供もぐずりますし、私が笑っていれば、笑顔を見せてくれます。ですから、とにかくよく話しかけるようにしています。 この子が生まれてくる前は、「温室で大切に育てられる蘭(ラン)よりも、アスファルトの隙間からでも花を咲かせるようなタンポポのように、強くたくましい子に育ってほしい」などと思ったりしました。 けれど、出産を経験してわが子を抱いていると、今は、ただただ健康にすくすくと育ってくれればそれでいいという思いになります。 「あたりまえ」の生活を送ることに幸せを感じ、自分が産んだこの子を、母である私が守らなければ、と強く思います。私自身も「自分で母になる」のではなく、「子育てによって、母親にしてもらう」という思いで、この子と一緒に成長したいと思います。