特別寄稿
第11回「OTANI PRESENTS ふれ逢いステーション」に出演して
箏・地歌三味線奏者 竹澤悦子
私の好きな言葉に「here・now−いま、ここ」というのがあります。 生きている自分、「今・ここで起こることを味わう」ことで感じる、生きている実感。 CD、DVDなどの媒体は、時に便利で有効なものですが、生(ナマ)を味わうこととはまったく別な次元のこと。そのことの大切さを富山の皆さんはよく知っているのですね。 4月に行なわれた「第11回 OTANI ふれ逢いステーション」に参加しました。 富山でもっとも収容数の大きなオーバードホール。満席のお客様の中で、演奏する喜びもひとしおでした。大きな舞台に気負うこともありましたが、川嶋さんとの共演に加え、地元のヤマダベンさんとのトリオ演奏もとても新鮮で、また佐山さんのグループの素晴らしい演奏を聴き、コラボでご一緒できたことも光栄でした。 音の会話と連鎖が 川嶋さん以外の皆さんには初めてお会いしたのですが、いろいろな「音の会話」ができてとても楽しかったです。 共通言語が【音】ですから、世界中どこの国の人たちとも会話できます。言葉とは違って、頭で考えなくても心に感じることができる・・・音楽の最も素敵なところです。 そして舞台で起こることのすべてを受け取り、味わう観客の皆さんがいて、その空気をまた舞台上の演奏者も感じて連鎖反応が起こっていく…そんな、音楽家にとってもっとも幸福で贅沢な時間を過ごすことができました。本当にありがたいことです。 私は「箏」という邦楽器奏者の分野で、古典や現代の作品を通して表現することと同時に、これからも即興演奏を続けて行きたいと思います。【いま・ここ】でいろいろな人々と出会っていく音楽。その「音」や「思い」を共有し、味わっていきたい…。 最後に、今回のような大きなイベントの成功には、それを支えるたくさんのスタッフの力なくしてはありえないことで、スタッフの皆様の心のこもった裏方ぶりにも感動いたしました。みんなで作り上げるひとつの舞台。出演者として参加できたこと、改めて感謝申し上げます。 あ、富山ならではのおいしい食べ物や地酒も、しっかり味わいました!ご馳走様です!気の毒な〜♪
竹澤 悦子氏(箏・地歌三味線) 1963年石川県七尾市に生れ、8歳より生田流箏曲を学ぶ。沢井忠夫、沢井一恵、中井猛の各氏に師事。東京芸術大学音楽学部卒業。'87年 沢井忠夫合奏団CD「箏」(コロンビア)に参加 文化庁芸術作品賞、‘98埼玉県芸術文化祭奨励賞受賞。現在、福島大学,上越教育大学、金城学院大学非常勤講師‘86「どんぐり」’93「koto vortex」を結成、'94年 板橋文夫(p)ユニット、‘02年音楽と映像の「FUTON LOGIC」等様々な活動により箏の可能性を拡げ、国内外にて反響を呼ぶ。「独箏〜ひとりごと」「コンタクト」等シリーズコンサートを開催。卓越した演奏と声の表現力で古典から現代まで幅広く活躍中。 竹澤悦子氏 公式ホームページ http://www16.ocn.ne.jp/~et-koto/