お客様から パワーをいただいて
ジャズ・バイオリニスト 寺井尚子

　4月3日開催の「第14回 ふれ逢いステーション」に出演しました。前日の2日に羽田から富山に来たのですが、この日の関東地方はたいへんな強風で、相当数の飛行機便の欠航が出て、フライトを心配しましたが、幸い私の乗る飛行機は数分の遅れだけで、無事富山空港に到着できました。
　富山は何度も訪れていて、その度に“自然の美しさに心が落ち着き、その厳しさに凛とする”私にとって大切な場所で、今回も楽しみにしてまいりました。富山と言えばシャープ＆フラッツの原信夫さんや、サックス・プレイヤーの川嶋哲郎さんの出身地であり、そして今回第1部にご出演の八木秀樹さんの出身地でもあります。ジャズ･ミュージシャンを生む環境があるのかしら？と思うくらい、地方都市としてはたくさんの有名なジャズ・ミュージシャンを輩出していますね。
　富山は食べ物がおいしいことでも有名で、お水、お米、お魚をはじめ、名産品なども多いので、そうしたこともひょっとして優れたミュージシャン輩出に影響は…どうかしら？でもこうしたおいしいものをいただけるのも、地方のコンサートでの楽しみであることは間違いないところです。

　今回、もうひとつ楽しみにしていたのは、以前に共演させていただいたことのあるサックス・プレイヤーの白井淳夫さんともお会いできることです。「ふれ逢いステーション」に2回ご出演になっている大隅寿男さんと同じ福井県出身ですよね。なかなか北陸は“濃い”ですね。

第14回ふれ逢いステーション　第1部より
（写真左が白井淳夫さん）

　今回で14回目を迎える「OTANI PRESENTSふれ逢いステーション」、音楽を通じてふれ逢い、1回1回の公演のエネルギーがとぎれる事なく持続して、渦のようにパワーアップしてきているのだと感じました。何といってもお客様のエネルギーがすばらしかったです。又、このコンサートを陰で支えているボランティアのスタッフの方々のさわやかな笑顔のお蔭で気持ちよくステージに向かうことが出来ました。このような素晴らしい「ふれ逢いステーション」で皆様と共に過ごせました事、本当にうれしく思っています。有難うございました。

「私のスタンダード」曲集

ジャズを演奏する魅力のひとつに、その場で生み出す、一回限りの即興の音楽であり、またその場で出会ったミュージシャンと、簡単な打ち合わせだけで共演が出来る楽しさというものがあります。演奏を始めるときには未知の世界であり、音の会話を通じて盛り上がっていく、そのとき限りの大切な音楽であるわけです。今回も、久しぶりにお会いした方、初めてお会いした方たちと一緒に演奏するという楽しみがありました。

第14回ふれ逢いステーション　第2部より

　当日は、お客様の反応が素晴らしく、富山の音楽文化に対する熱さを実感しました。一曲ごとの拍手も心に響きましたが、第2部を終えて舞台袖に下がったときに、アンコールを求める拍手が津波のように沸き起こり、メンバー全員心に熱いものがこみ上げてきました。私たちにとって、お客様からいただくパワーが、ジャズ・バイオリニスト、ジャズ・ミュージシャンとしての原動力になっているということを改めて感じました。

　ちょうど2月にニュー・アルバム「My Song」をリリースした直後ということもあって、今回のコンサートでは、アルバムの中からも何曲か演奏メニューに入れさせていただきました。このアルバムは初の「スタンダード曲集」ですが、スタンダードと言ってもジャンルを越えた「音楽のスタンダード」というコンセプトで選曲しました。皆様にとってもどこかで一度は耳にされた曲が多数あると思いますので、ぜひお聴きいただきたいと思います。
　今年の3月、「文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞する事ができました。このような賞をいただき、身の引き締まる思いでいます。この賞を励みに、精進していきたいと思っております。今後とも応援よろしくお願いいたします。