10月4日は徒歩の日
製造部圧延課 ハンドルネーム 家族歩き隊(50代・男性)
10月4日は徒歩の日です。おそらく語呂合わせなのではないかと思います。健康な方にとって、なぜ徒歩の日なのか疑問に思われるかもしれませんが、そこで思い出すのは去年亡くなった母のことです。 父の体が弱かったために、母は父の看病や炊事といった家事や、外で力仕事をして苦労していました。私たち兄弟を育てるためにがんばって苦労したため、背中が丸く曲がって、体の小さな人でした。15年前に道で転んで、右足を痛めてしまってから、歩けなくなり杖をついて歩くようになってしまいました。それでも母は家の草むしりや家事をいとわない人でした。 母は昔から散歩や旅行が大好きで、県内、県外どこにでも行きたいと言っていましたが、足が不自由になってからは、遠くへ外出することができませんでした。 それから時が経ち、長男と私たち家族で初めての北海道旅行を計画しました。母は、最初は、みんなに迷惑をかけてしまうのではないかと不安で気が進まなかったみたいですが、皆で手を貸すからと誘って出かけました。 雄大な風景に母の笑顔 春の北海道は山や湖は想像した以上に壮大で綺麗でした、となりで母がその景色に感動をしているのを見て、連れてきてよかったと思いました。少し残念だったのが、摩周湖が霧で曇ってはっきり見えなかったことです。しかし母はまったく気にしてはいない様子で喜んでいました。 北キツネ牧場を訪れた時には、兄がカメラのヒモを垂れ下げながら歩いていると、後ろをついてきていたキツネはゆれているヒモが気になったのか、噛み付いたのです。兄はそれに気づき、その瞬間、兄とキツネの綱引きが始まりました。それを見ていた周りの人たちと一緒にお腹を抱えて笑っている母の顔が、本当に楽しそうでした。 母は花が大好きで網走郡大空町にある芝桜公園にも寄りました。ちょうど旅行した時期が満開の季節だったので公園に見渡すほど咲いている芝桜を見て歩き喜んでいた笑顔が今でも目に浮かんできます。 「早く外を歩きたい」 そんな母も2年前に病気をしてから、元気がなくなり歩けなくなりました。入院し、病院の窓から外を眺めては、家族や看護婦さんに「早く退院して歩きたい」と本音をもらしていました。私や妻が病室へ行くと、歩けないのに、「杖を持ってきてほしい」と、わがままを言っていた母でしたが、体調は良くならず寝たきりになってしまいました。今思えば、あのとき杖や車椅子を用意してあげればよかったなと思います。母が亡くなってさびしくはありますが、小柄ながら、がんばって働いている姿や、大好きな花を見て喜ぶ笑顔など、楽しい思い出ばかりが思い出されます。