春本番
技術部敷設課 ハンドルネーム 気晴らしファーマー(60代・男性)
4月と聞けばいよいよ春本番。畑物の植え付けの季節だ。私は自宅でひっそりと野菜作りをしている。“ひっそり”の意味は私の一人仕事だということと、それほど熱心というほどではなく、今の私にとって野菜づくりは「気晴らし」程度なのだ。本業もあるから、こればかりに力を注ぐことは出来ない。趣味としてのこだわりもない。時期が来たら苗を植えて、実がなったら収穫して家族で食べる。毎年、家族で食べる分だけ作る。夏に向けては、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、カボチャなど。冬には大根やカブ。米作りもしている。 4〜5月には夏野菜の苗を植える。トラクターで土を起こし、準備をする。苗を植えたら、天候や野菜の状態と相談しながら水をやったり、肥料をやったり。判断が必要だからけっこう難しい。草取りが一番大変だ。苗が駄目になってしまうから、下手に除草剤も使えない。6〜7月に実がなり始めるとようやくほっとする。 この趣味は10年ほど前から始めた。はじめは手探りだった。時期になってもなかなか苗が育たなくて心配もした。後から人から聞いて、畑のなかでも野菜を植える場所をシーズンごとにローテーションしなければならないことを知った。それまで育ちが悪かったのは、そのせいだったのかも。始めたころに比べれば、最近はぼちぼち上達していると思う。プロレベルのお隣りさんに比べると、まだまだ未熟だが。 もう少し母に習っておけば もともと我が家の野菜作りは、母親がメインで、母にとっては、これが仕事のようなものだった。私の子供のころの記憶では、母がスコップやくわで畑を耕して(今のようにトラクターではない。私は耕運機を使って手伝いもしたが…)、キュウリやトマトの蔓を巻きつかせる支柱をたてるところから、水やり、収穫まで仕事量は半端ではない。とくに、草取りは大変だ。端から草をとっていっても、手作業だから、何日もかかってようやく一面終わったと思ったら、スタート地点の草はすでに伸びている。こんなエンドレスな作業をもくもくと続けていた母に頭が下がる。 私といえば、母に言われるがまま、手伝いをしていた記憶はあるが、野菜作りに興味もなかった。あのとき、母にいろいろ教わっておけば今は違ったかも。 手作りだから、たまに…いや、いつもと言っていいほど頻繁にいびつな形の野菜ができる。例えばキュウリが肥大化して、瓜っぽくなってしまったり、トマトがハート型になったり。カラスなどの鳥につつかれることもしばしばあり一苦労だ。家族は肥大化したキュウリをみて「何これ?食べられるの?」と疑わしい目で見る。もちろん、食べられる。「料理の仕方ひとつじゃないか」と内心思う。…けれどそんなことも家族には言えず、あまりにもひどい形のものは格好悪いから畑に捨てて、家には持ち帰らないようにしている。 そんな、気の向くままの野菜作り生活を、これからも続けていきたいと思う。