コレに注目! 瀬戸内の活気あふれる春
技術部敷設課 ハンドルネーム bB117(60代・男性)
春色が濃くなるこの季節になると、ふるさとのみかん山では栽培の準備に活気付きます。 私の嫁の実家がある山口県周防大島町はみかんの栽培が盛んで、嫁の実家もみかん栽培をしています。長い間義母が一人で約250本(面積2反分)のみかんの木を世話していました。3年ほど前から妻も本格的に手伝っています。 周防大島町は山口県東南部の瀬戸内海に浮かぶ島です(1976年に大島大橋で陸続きになりました)。島の大半は山地で、年間平均気温15.5℃と比較的温暖な町です。夏には海水浴に訪れる観光客も多く、“瀬戸内海のハワイ”との呼び声も高く、夏になると役場職員のアロハシャツ姿が定着しています。 皆さんにご紹介したい町の特徴として、島の全戸一軒一軒に役場から防災用ラジオが支給されています。役場の大きなスピーカーから町全体にアナウンスするスタイルはよく聞きますが、家にいることが多いお年寄りが災害時に情報を聞き漏らさないようにこのスタイルをとっているようです。そして、このスピーカーは災害情報だけではなく、みかんの栽培に必要な情報(種まき、肥料、収穫の時期など)を知らせてくれます。みかん農家ではこの情報をもとに各工程のタイミングを見計らっています。 気候が温暖であること、降水量も適量で土地の水はけがよいこと、瀬戸内海から吹く潮風などに加え、栽培のための情報も提供してくれる。こんな土地だからこそ、みかんづくりに適しているのでしょう。 さて、消費者の皆さんにとってみかんは、秋から冬にかけての季節の味ですが、みかんづくりは1年中、手の休まる時期はなく、その工程は大変なもので、毎日でもみかんのことを気にかけていなければなりません。以下にみかん収穫までのおおまかな工程を紹介します。 みかんの収穫工程 2月〜3月下旬 木・枝の剪定、手入れ 3月下旬 春肥料 4月〜5月 消毒(花が咲く時期前後) 5月〜7月 消毒(ダニ・黒点対策) 6月 夏肥料 8月 消毒(みかんバエ対策) 9月〜10月 摘果(質のいいみかん以外をもいでいく作業) 10月 秋肥料 11月 消毒(色つけ・腐り止め) 11月 JAよりみかんの出来具合チェック 11月〜 収穫(早生みかんより)
葉25〜30枚に実1個 みかんづくりは、冬からスタートします。まずは枝を整え、木のメンテナンスをします。そして、春から秋にかけて3回肥料をあたえ4回の消毒を行います。上記にあるように、消毒は1回1回に意味があるので欠かせません。このタイミングは、地元のJAから各みかん農家に指示されます。それを参考に肥料や消毒のタイミングを見極めます。あとは9〜10月には「摘果」と呼ばれる作業が大切です。みかんの木では葉25〜30枚に1個の割合で実をつけると大きさの揃った味のよいみかんができると言われています。そこで、実がつきすぎている場合は、大きすぎる実や小さすぎる実、病気になった実や虫食いの実を摘む作業をします。その後、JAから出荷可のみかんが見極められ、はじめて市場にお目見えするというわけです。 このサイクルが崩れると売り物になりません。ですから、台風の時期などは冷や汗ものです。山口みかんに関わらず、店頭に並んでいるみかんには、みかん農家の努力と真心が込められています。 うちでは200箱のみかんをJAに出荷しています。ジュースや缶詰も50箱ほど出荷がありますが、その他のほとんどを家族や親戚でわけ合っています。儲けよりも「自産自消で地域の活性化」という意識のほうが強いのだと思います。収穫時期には、親戚一同周防大島に車で訪れ、収穫を手伝い、トランクいっぱいにみかんを積んで帰ります。みんなが集まると、義母の一年間の労をねぎらって、バーベキューで盛り上がります。 3年前からみかんづくりを手伝うようになった妻は、日々母の背中をみて勉強しているようで、みかんづくりへの思いは日増しに強くなっているようです。島の高齢化が進み、現在は深刻な人手不足に悩まされ、年々生産量は減少していますが、我が家では可能な限りみかんづくりを後継していきたいというのが、妻の願いなのだそうです。
ご実家のみかんの木