12月23日「東京タワー完工の日」
業務部営業課 ハンドルネーム 御上りさん(60代・男性)
12月23日は「東京タワー完工の日」ということで、鉄屋の視点で少し触れてみたいと思います。 戦後まもなく、本格的なテレビ放送の開始に備え電波塔の乱立を防ぐために、日本電波塔鰍ェ官民用に建設したのが「東京タワー」です。元請は竹中工務店、鉄骨製造は三菱重工業と松尾橋梁のメンバーで昭和33年暮れに完成しました。工期は18ヶ月、使用鋼材は4000トンにも及んだそうです。 設計は、日本各地のタワーを数多く手がけてきた日建設計が行いました。ちなみに最近オープンした東京スカイツリーも日建設計が担当しています。東京スカイツリーが完成して、ランドマークの座を明け渡したとの見方もありますが、ライトアップされた東京タワーはやはり優雅で、全国にファンが多いのです。私も10年ほど前に時間潰しに上ったことがあります。(これが本当の御上りさん) 以前NHKで放送されていた『プロジェクトX』でも東京タワー竣工までを特集していました。今や建築分野での使用比率が高いH形鋼(※1)は昭和30年代初頭はまだデビュー前で、スカイツリーに多用された鋼管類(※2)も使用されていませんでした。チャンネル(※3)、アングル(※4)、平鋼(※5)を組み合わせ、地上140m地点までは、鋲(びょう)をハンマーで打って固定するリベット工法(※6)で組み立てられていたようです。 立山連峰越しのミニ東京タワー 当時、船舶なども含めた鋼構造物には、現在多く見られるハイテンボルト締め(※7)ではなく、リベットで締める工法が使われていました。神通大橋や高岡大橋にも、東京タワーと同じ鋼材を使用したリベット工法を見ることができます。新しい箇所には、東京タワーには使われていないH形鋼も見られます。橋を通行する際に注目してみれば、材料や工法の移り変わりを眺めることができますよ。 また私は、送電鉄塔に興味を持っております。県内には、大型の送電鉄塔がいたる所に建っています。大谷製鉄の受電棟に繋がる、当社専用の大型アングル鉄塔もすぐ近くにあります。アングル鉄塔が主流ですが、他にパイプ(鋼管)鉄塔や鋼板製のものもあります。富山市石坂では、鋼板製の鉄塔を数本見ることができます。紅白に塗られた鉄塔が立山連峰を借景に建っているのを眺めると、ミニ東京タワーのようでとても優雅です。 皆様も鉄塔の持つ美しさというものを見つけてみてください。
(注釈) ※1 H形鋼…断面がH字形の形鋼のこと。形鋼とは、一定の断面形状に成形された、材軸方向に長い鋼材の総称。 ※2 鋼管…鉄鋼製品の分類の一つで、鋼を圧延して作られる管形をしたパイプ。 ※3 チャンネル…断面がU字形をした形鋼。 ※4 アングル…断面がL字形をした形鋼。 ※5 平鋼…長方形の断面に4面とも熱間圧延された鋼材。 ※6 リベット工法…複数枚の金属板等を固定するための鉄製の鋲(びょう)で組み立てる方法。 ※7 ハイテンボルト(ハイテンションボルト)…高力ボルトのこと。高張力の鋼で作られた強度の高いボルト。 参考:普通鋼電炉工業会ホームページ、Wikipedia