特別寄稿
KNBラジオ「レディオ・グラフィティ」放送開始から半年
アナウンサーは、今そこにある空気を言葉で伝えようと苦悩するのが仕事です。「何を格好つけて!」と笑われそうですが、本当にそうなのです。「この瞬間を伝えるにはどんな言葉がピンと来るか?」そんな本番の一瞬のために、あっちこっち訪ねては目には見えない言葉探しをしている地味な職業なのです。 のっけから音楽の話ではなくてスミマセン。でも実はとても関係があるんです。 昨年、音楽番組『レディオ・グラフィティ』の担当だと初めて聞かされた時、「やった!大好きなクリーム(※1)やドアーズ(※2)の曲と関われる!」という嬉しい気持ちの反面、不安もありました。 私が生まれたのは1969年。家のリビングには童謡全集のLPしか無い厳格な(?)教師の家庭で育った私にとって、初めて触れた洋楽の世界は『MTV』(※3)。しかもゾンビ姿で「スリラー」を踊るマイケルジャクソンでした。ですからビートルズ世代でも無ければ、ウッドストック・フェスティバル(※4)のこともインターネットでしか知り得なかったのです。 時代の空気が詰まったオリジナル盤 「アナウンサーとして、こんな薄っぺらな経験で音楽を語ってもいいものか?」そんな不安を抱えたままの番組スタートだったのです。 しかし始まってみればそんな心配は無用でした。1960〜70年代に青春時代を過ごした竹中晃さんの解説が入ることで、同じ世代の方々も頷いていただけます。私は当時を知らない世代なりに素直に反応することで、30代〜40代のリスナーの胸にも響くことに気がついたのです。そう、音楽に構えなど要らないのです。 こんな感じで始まったレディオ・グラフィティも、早や半年が経ちました。毎回、竹中晃さんのオリジナル盤へのこだわりには驚かされますが、最大の驚きはこのオリジナル盤一枚の中に、時代の空気が全て入っていること。針を落とすだけで、人それぞれに違うはずの当時の記憶も一瞬にして再生される訳ですから・・・。これはどんな饒舌なアナウンサーでもかないません。降参!
※1 クリーム(Cream,1966年 - 1968年) イギリスのロックバンド。ジャズの即興演奏の要素とブルース・ロックを融合したサウンドによって、ハードロック形成に大きな役割を果たした。 ※2 ドアーズ(The Doors,1965年‐1970年初め) アメリカのロックバンド。ジム・モリスン(リード・ボーカル)、レイ・マンザレク(オルガン、キーボード)、ロビー・クリーガー(ギター)およびジョン・デンスモア(ドラムス)の四人で活動した。 ※3 MTV ニューヨークとロンドンに本部を置く、アメリカの若者向けのケーブルテレビ・音楽専門チャンネル。24時間ポピュラー音楽のビデオクリップを流し続ける。 ※4 ウッドストック・フェスティバル 1969年8月15日(金)から17日(日)までの3日間、アメリカ合衆国ニューヨーク州サリバン郡ベセルで開かれた、ロックを中心とした大規模な野外コンサート。
■武道アナ(リンク先はKNBwebのアナウンスルームです。) http://www2.knb.ne.jp/analist2/comm/index.asp?Name=budou ■「レディオ・グラフィティ」 KNBラジオで、2008年10月からスタートした、音楽番組。毎週土曜日、夕方5時から30分間。戦後の日本の発展を支えてきた団塊の世代が、青春時代を送った1960年代〜70年代は、現代のポピュラー・ミュージックの基本的スタイルが出揃ってきた時代でもあります。当時の曲をフルコーラス、ノーカットでオンエアーする番組。 【番組ホームページから】 「グッドミュージックをフルコーラスでお届けします♪ 音楽が一番輝いていたあのころに、青春を過ごした人 そして、そんな時代の音楽が大好きな人へお届けする30分 ゆったり過ごす週末の夕方、 心満たす音楽の風に吹かれてください。」 http://www6.knb.ne.jp/radiograffiti/