娘が教えてくれた古都
技術部電気課 ハンドルネーム 一家の京都親善大使(50代・男性)
私事で恐縮だが、娘が京都に移り住んで5年になる。京都の大学へ進学し、そのまま京都で就職したのだ。 娘が学生だった頃は、半年に1回ほど妻と一緒に京都を訪れた。京都はいろいろな寺社仏閣が春の桜、冬の雪景色など季節により違った顔を見せてくれるので、四季を通じて楽しめる。 その中でも、昨年行った雨上がりの伏見稲荷神社は別格だった。霧の中に、どこまでも続いているように錯覚するくらいに、朱の鳥居が待ち受ける。漂う空気が初夏にも関わらず冷たく凛としていて、自然に背筋が伸び、異次元の世界にさえ感じられた。 その頃はちょうど娘の就職が決まった頃で、娘と妻と私の3人で久しぶりにゆっくりとした時間を過ごすことができた。 毎日、玄関先に打ち水をし、楚々とした花で来客をもてなす。意外なところにおばんざい屋、豆腐屋があり、あちらこちらから京都の言葉が聞こえてきて、人々の生活に息吹が感じられる。それこそが、観光地としての京都ではなく、京都の本当の姿のように思えて気に入っている、と娘は言っていた。 この5年のうちに我が家では、京都に関する本が増え、いつの間にか「疎遠だった場所」から「身近に感じる場所」に変わった。 心配事は尽きずやきもき… 娘は今年の4月に、第一志望だった京都の和菓子屋に就職した。人前で話すことが好きな彼女は営業課に配属され、今は活き活きと仕事に励んでいるそうだ。話を聞くと順風満帆のようだが、食事はしっかりとっているのか、体調を崩してはいないか、など親として心配事は絶えない。最近は、自動車学校に通い始めたらしく、「富山にいれば助手席に乗って教えてあげられるのに」と、やきもきすることもある。 だが、娘は毎日のように電話をくれ(もっぱら、妻のほうにだが)、今日あったことを教えてくれる。たまに電話を代わっても照れくさく、「しっかり食べろよ」くらいしか言わないが、心のなかでは嬉しく思っている。 京都で自分の好きな仕事を見つけ、張り切って頑張る娘を応援していきたい。また家族で京都めぐりできたらいいと思う。