特別企画
富山の古き良き伝統を伝える祭り、八尾の“おわら 風の盆”。 今回は特別企画として、当社の旧八尾町出身の社員お二人が、演者側と観客側のそれぞれの立場から、この“おわら 風の盆”での思い出やエピソードをご紹介いたします。
「八尾の夏の風物詩」 製造部資材課 ハンドルネーム 風舞(女性) お待たせしました!以前にも一度、八尾のおわら風の盆についてご紹介しましたが、好評にお応えして(笑)、風の盆シリーズ第2弾!エピソードをいくつか紹介したいと思います。 2008年 突然の通り雨に大騒ぎ 町舞台へ行く時のことでした。私が住む福島町内は、踊りに参加する小学生は保護者が同伴しなければならず、娘と一緒に参加していました。 途中から、雨がポツリポツリ、しまいにはザーザーと降り出してしまいました。福島町内は八尾の中でも一番大きい町で、踊り子と保護者あわせて総勢百人余り、まさか引き返すわけにもいきません。 そこで、工事現場などでよく見かける大きいブルーシートを屋根がわりに、踊り子を中に入れ、保護者が周りを囲むようにブルーシートを持って歩きました。手を上げて持っているので、疲れて手が下がってくるとシートの上に溜まった雨水が、自分のところへ滝のように落ちてきます。あっちでキャー、こっちでキャーと叫びながら、町舞台へ着いた頃はずぶ濡れでした。町舞台で待っておられたお客さんはそんな私達に拍手喝采してくれました。 長い間おわらをやっていますが、生まれて初めての経験でした。この年は天候に恵まれず、不完全燃焼の年でした。 2009年 懐かしい三味線の音色 八尾町は「坂の街」とよく言われます。福島は坂の下のほうにありますが、私の実家がある西新町は坂の上にあります。 昨年の今頃、幼馴染から「20年ぶりに風の盆に帰ってくるので、西新町の方へ上がって来られないか?」とメールが届きました。私も「夜中なら行けるから、久しぶりに二人で町流しに参加しよう」と返事をしました。 当日、娘を寝かせてから三味線を抱え、福島から西新町まで上がって行きました。ひと坂上るごとに雪の量が違うように、三味線の音色も違います。懐かしいメンバーと久しぶりに練り歩き、上(かみ)の町でしか味わうことのできない音の響きに、1日だけのつもりが結局3日間とも西新町へ行って流しました。旦那様、福島の皆さん、御免なさい。でも前の年とは打って変わって天候にも恵まれ、久しぶりに満足した風の盆でした。 (クリックすると「福島〜西新町」の地図を表示します。) 資料提供 「越中八尾観光協会」 2010年 家族三人三様の風の盆 今年、私に弟子ができました。 中学生になった娘です。娘が通う八尾中学校では、部活とは別に“趣味の時間”があります。娘は郷土芸能部の教室に入って三味線を習い始めました。家で「お母さん、三味線かして」と言うので、貸してやると、「えっ、この三味線、印ついとらん」と驚いていました。どうも学校の三味線は糸を指でおさえるところに印がついているらしいです。 「印ついとったら竿ばっかり見て弾かんにゃんやろ、耳で覚えられ(※)」 と、かつて私もそう教えられたように、娘に言い聞かせています。 そんな娘も、今年は町の浴衣を着ておわらに参加します。私もようやくステージママ卒業です。久しぶりに町の浴衣を着て、おわらに復帰しようかと考えております。旦那が唄い、娘が踊り、私が三味線を弾く…。今年はいつもと違った風の盆になるような予感がします。 〜浮いたか瓢箪軽そうに流れる 行くさきゃぁしらねどあの身になりたや〜 (※)訳=「印がついていたら竿ばかり見て弾かなきゃいけないでしょ、耳で覚えなさい」 (下の写真は風舞さんからご提供いただきました。)
踊り一つ一つの仕草に意味がある 製造部圧延課 ハンドルネーム おわらの微関係者(男性) 今回の月刊OTANIで「おわら風の盆の思い出を」と依頼され、正直、思い出という思い出があまり無い私でしたが、古い記憶の一ページをめくるように思い出してみました。 私は八尾町で生まれ育ちました。よく八尾町出身と言うと、踊れて、歌えるように思われがちですが、小学校の運動会や、学校行事で踊る初歩的なものしかわかりません。 また、地元がおわらの本場から少し離れているため、お祭りに直接(踊り、囃子)参加したことはありません。小学生ころは、夜店めぐり、中学、高校時代は、町に繰り出して友人たちと騒いでいたこともありました。いわば、「おわら」イコール「夜遊び」と言ったところでしょうか。そんな思い出ばかりですが、知りたい方は個人的に聞いてください(笑)。 しかし、こんな私でも、20年ぐらい前の祖父の法事で、一度だけ踊りを見ることがありました。そしてその時の親戚達が言ったことが今でも心に残っています。 「一枝ちゃん(亡母)も、おわら上手に踊とったねぇ。」 と、みんなで笑っていると 「今の若い者は、おわら踊っても意味が解っているのかね?」 「踊りの稽古も大事だけど、その意味もちゃんと教えていかなければならないし…。」 「誰か教える人いるのかねぇ、そのうちに『踊れるけど、意味知らん』と言う者ばっかりになったら寂しいね。」 と、おわらの伝承について心配している話になり、 「農業も機械化が進んでしまって、踊りの意味が希薄になってしまっている。」 「今の作業を踊りにしたら、機械に乗ってまっすぐ前に進むだけで味気無いよ。」 との会話の後、せっかくだからと、私はおわらの踊り一つひとつの意味(※下記参照)を教わりました。 おわらには、激しい動きや、掛け声など無く「見ていても退屈」と言う人もいますが、一つひとつの仕草の意味を感じながらご覧になれば、違った楽しみ方が出来るかもしれません。また胡弓、三味線、太鼓の音は、ゆったりとした流れの中に力強さも感じられ、その仕草の一つ一つを情緒豊かに引き立たせます。 最近は、風の盆と聞けば観光客が多く、交通渋滞で家に帰りにくいと思うだけになっていましたが、これを書きているうち、またゆっくりと踊りを見に行こうかと思うようになりました。みなさんも一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。 ※振り付けの意味 クリックしてごらん下さい。 1.はじまり〜苗箱を整える 2.種まき〜種まきの確認 3.笠をぬく〜合掌〜おひらき 資料提供 おわら風の盆行事運営委員会
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