社員の家族からの投稿
社員(圧延課)の娘婿 ハンドルネーム ヤッホー
立山連峰の中でも、特に険しく荘厳とさえ思える山容を呈する剣岳。 その姿を前にすると、ある者は心を打たれ、ある者は童心に返り「ヤッホー」などの雄叫びを発する登山者もいるくらいに、荘厳さと威厳に満ちています。わたしはその剣岳を中心とする立山連峰の山々と登山者の安全を守ることを仕事とする「山岳警備隊」に所属していました。 昨年5月の春祭りの夜、お義父さんと一緒にお酒を呑んでいるとき、「エーッ、お義父さん、一度も剣岳に登ったことはないんですか?エセ富山県民ですよー」という私の一言に激昂したお義父さんは、酔った勢いで「剣登山」を宣言!ここに齢60歳を過ぎてからの剣岳挑戦が始まったのでした。 いよいよ8月のお天気のいい休日、富山駅前から直通バスで室堂に向かったのですが、バスが動き始めてまもなく、後ろの方で「プシュッ!」という音が聞こえて、ふと振り向くと、お義父さん、早速一杯ヤッテるじゃありませんか。この先、標高の高いところを3時間ほど歩くって言ったでしょ。空気薄いから、体が慣れるまで結構きついですよ。大丈夫かな・・。 夕方には身体も慣れて… 室堂に着き、その日に泊まる予定の山小屋に向って歩き始めました。雷鳥沢を眺めて剣御前を越え、剣沢までの約3時間の行程です。最初の一時間位、お義父さんは鬼と般若を足して二で割ったような形相だったですよ。それでもさすがに、熱と炎に囲まれた職場で働いているので、タフですね。山小屋が見えた辺りからようやく体が慣れてきたというか、酒が抜けたようで、足取りも軽そうでした。 山小屋に着いて早速、目の前にそびえる剣岳を眺めながらビールで乾杯! 美味しかったですねぇ。それだけでやめておけばよかったですね。 山小屋での夕食時、小屋の人がビールを持ってきてくれました。500ミリリットルの缶ビールを沢山乗せて私たちの前にやってきて「とりあえず置いておきますね」と、全部置いていきました。12本以上はあったと思います。明日の朝は早いので、ほどほどにしておこうと「始めは」思っていたのですが、飲み進むうちに、「折角出されたもんは、呑まんなぁあかんまい」と調子に乗って、次から次と呑んでいき、そのうちにビールとともに「登頂意欲」と「記憶」も無くなっていきました。 山の朝は早く、午前2時頃には周りで出発準備を始めるパーティもいる中、私たちは必死に二日酔いと戦い、モタモタと午前4時を回った辺りで小屋を出ました。 それから1時間ほど歩いたのですが、一服剣というピークに達したとき、ようやく朝焼けが周りを包み込み、大変幻想的な光景が広がりました。
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周りの登山者はいっせいに歓声を上げる中、私たちは朝焼けというより、胸焼けがひどく、結局一服剣で引き返すことにしました。 帰り道、室堂の「みくりが池温泉」に浸かり、またまた湯上がりの一杯を呑みながら、「もう酒はこりごりだ…」との言葉で、お義父さんの剣岳挑戦は終わりを告げました。