特別寄稿
父の初盆を迎える
椛蜻野テクノサービス 代表取締役 安井紀一
父が逝って、早くも半年過ぎました。もうすぐ初盆を迎えます。もう少し長生きしてくれると思っていましたが、今年の1月28日、あっけなく逝ってしまいました。91歳でした。 父は5年前の平成14年秋、善光寺参りの帰り道、夕方6時少し前の薄暮の中、横断歩道を渡っていたときに82歳のお年寄りの運転する車にはねられ、大怪我をしました。頭の中の出血を少し抜き、足首に金属棒を入れ、杖を付きながらの生活を送っていました。 「年寄りの敵は風邪と怪我だよ」と言っていた本人が、その怪我がもとで運動不足になり、少し寿命を縮めたのではないかと思います。 「善光寺さんにお参りしたとき、お賽銭が足らんかったかねぇ〜」と家族と話しながら、笑いながら晩酌をしていた模様が思い出されます。 それは突然の死でした。 当日私は、町内の会合の後、昼間から友人たちといつもの居酒屋で酒を酌み交わしていました。いつもの流れからいくと、その後、二次会へと流れていくのが常でした。しかしその日は、たまたま夕方から知人との約束があり、二次会には行かず帰宅していました。ついさっきまで、言葉を交わしていて、そろそろ夕方の出かける時刻が近づき、「これから出かけてくるから…」と声をかけに行って、様子がおかしいと気が付いたのでした。 父は特に苦しむことなく、静かに眠るように、安らかに逝きました。まだぬくもりがあって、自宅の居間で母の見守る中、静かに人生を終えたお父さんは、母が「今日は良い顔をして寝ているねぇ」とつぶやいたくらいに、おだやかな死でありました。 家族のにぎわいが供養に 仏間で行なわれた父の納棺を、孫や、ひ孫、家族みんなで見守っておくりました。きっとこの儀式は、孫、ひ孫たちの記憶に残ることでしょう。「命」ということの意味を考える機会になったことと思います。皆様の気持ちに支えられて無事葬儀も終えることが出来ました。感謝の気持ちでいっぱいです。 そろそろお盆を迎える時期になりました。この時期、例年であれば父からお墓の清掃の指示が出る頃です。細かいところにも気がつく父は、私たちの清掃後、かならず「まだきれいになってないじゃないか」と、手直しをしていました。 「父の初盆」を迎えることに戸惑いを感じながら、今年は父からクレームがつかないくらいにきれいに磨いたお仏壇とお墓で迎えてあげたいと思っています。お酒が好きで、家族の賑わいが好きな父だったので、精一杯きれいに磨いたお仏壇の前で、母、私たち、息子夫婦、孫たちで、にぎやかな食事会で父の思い出を語り合いたいと思います。 今年7月1日に、娘に子どもが授かりました。父が授けてくれた命のように思えてなりません。男の子です。これからこの子の成長の節目ふしめで父を思い出しながら、お盆ごとにお墓に報告し、安心させてやりたいと思っています。お盆は、ご先祖様への感謝の気持ちを思い起こさせてくれる機会だと、あらためて教えてくれたように思います。